Japanische Klassiker mit Furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.531 Zeichen · 23 Bildschirme
「飛んだお邪魔をいたします」
世間並に挨拶をし乍ら、洋服で固く座り直した京極三太郎は、正面に顔を挙げた令嬢と、眼と眼と逢って驚きました。それは見慣れない和服姿にはなって居りますが、紛れようもない同僚の矢留瀬苗子その人だったのです。
「あ、貴女は矢留瀬さん」
「いえ、私は錦小路苗子でございます」
「すると、矢留瀬苗子さんと仰しゃったのは?」
「昔はそう申したことも御座いますが、あれはペンネームで、本当の名ではございません」
「すると、東京ポストは何時お止しになったのです」
「もう一年も前ですワ、何時までも新聞記者なんかして居てはいけないと、両親がやかましく申しましたので」
話の調子は間違いもなく矢留瀬苗子ですが、それにしてはまた何という冷たい素気なさでしょう。丁度入江某という華族出の女優を見るような、品の良さと冷たさが、相対する京極三太郎を窒息させそうです。
こんな筈では無かったが、――京極三太郎は幾度か考えました。「東京ポスト」に居る頃から、矢留瀬苗子は京極三太郎と愛の黙契があり、二人の仲は同僚の羨望の的となって居たのです。
そして何時でも切出しさえすれば、二人は天下晴れての恋人同士だったのです。