Japanische Klassiker mit Furigana
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ようちゅう
妖虫
江戸川 乱歩
Lesen Sie 妖虫 (ようちゅう) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 120.290 Zeichen · 239 Bildschirme
日頃作法正しい殿村夫人が、こんなに取乱しているのはただ事でない。
「どうしたのです。珠子がどうかしたのですか」
操一氏も色を変えて立上った。
「ごらん下さい。これです。ふと気がつくと、お嬢様のベッドの下に、こんな紙切れが落ちていました。いつの間に、どうして、あのお部屋へ入って来ましたのか、わたくし、もう怖くって、じっとしていられなかったものですから、お嬢さまにはないしょで、こちらへ駈けつけたのです」
その紙切れには、赤鉛筆で、幼児の自由画の様なものが一杯に書きなぐってあった。ちょっと見たのでは、何の絵だか分らない程下手な、赤い蠍の形だ。アア、今は珠子の寝室までも、妖虫の触手が伸びて来たのか。
こうしている間にも、珠子の上に危険が迫っているのだと思うと、跫音の高くなるのも構っていられなかった。二人は先を争う様にして珠子の寝室に急いだ。
行って見ると、珠子には別状なく、却って彼女の方で、父と家庭教師のただならぬ気色を怪んだ程であったが、操一氏はそのまま落ちついている気にはなれなかった。
彼は娘の部屋を出ると、書生や女中を呼び集めて、家中の電燈をつけさせ、あるだけの提灯に火を入れて、縁側や、庭園の要所要所へかけ並べ、その間を、手分けをして巡廻させることにした。