Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

Lesen Sie 孤島の鬼 (ことうのおに) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 181.795 Zeichen · 359 Bildschirme

Aozora Bunko

睡眠の為に思考力が戻って来たのが、呪わしかった。

「怖い。僕、怖い」

私は諸戸の身体をさぐって、擦り寄って行った。

「蓑浦君、僕達はもう再び地上へ出ることはない。誰も僕達を見ているものはない。僕達自身だって、お互の顔さえ見えぬのだ。そして、ここで死んでしまってからも、僕等のむくろは、恐らく永久に、誰にも見られはしないのだ。ここには、光がないと同じ様に、法律も、道徳も、習慣も、なんにもない。人類が絶滅したのだ。別の世界なのだ。僕は、せめて死ぬまでの僅かの間でも、あんなものを忘れてしまいたい。今僕等には羞恥も、礼儀も、虚飾も、猜疑も、なんにもないのだ。僕達はこの闇の世界へ生れて来た二人切りの赤坊なんだ」

諸戸は、散文詩でも朗読する様に、こんなことを喋りつづけながら、私を引寄せて、肩に手を廻して、しっかりと抱いた。彼が首を動かす度に、二人の頬と頬とが擦れ合った。

「僕は君に隠していたことがある。だが、そんなことは人類社会の習慣だ、虚飾だ。ここでは隠すことも、恥しいこともありゃしない。親爺のことだよ。アン畜生の悪口だよ。こんなに云っても、君は僕を軽蔑する様なことはあるまいね。