Japanische Klassiker mit Furigana
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えいがじだい
寺田寅彦随筆集 第二巻
寺田 寅彦
Lesen Sie 寺田寅彦随筆集 第二巻 (えいがじだい) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 207.099 Zeichen · 419 Bildschirme
そしてめいめいの小さな頭にやがてきたるべき奇蹟の日を描いてそれを待ち遠しがっているのであった。今度生まれたのは全部うちで飼ってほしいという願いを両親に提出するのもあった。
ある日家族の大部分は博覧会見物に出かけた。私は留守番をして珍しく静かな階下の居室で仕事をしていたが、いつもとはちがって鳴き立てる三毛の声が耳についた。食物をねだる時や、外から帰って来る主人を見かけてなくのとは少し様子がちがっていた。そしてなんとなく不安で落ち着き得ないといったようなふうで、私のそばへ来るかと思うと縁側に出たり、また納戸の中に何物かを捜すようにさまよっては哀れな鳴き声を立てていた。
かつて経験のない私にも、このいつにない三毛の挙動の意味は明らかに直感された。そして困ったものだと思った。妻はいないし、うちにいる私の母も年の行かぬ下女もいずれも猫の出産に際してとるべき適当の処置についてはなんらの予備知識も持ち合わせなかったのである。
ともかくも古い柳行李のふたに古い座ぶとんを入れたのを茶の間の箪笥の影に用意してその中に三毛をすわらせた。しかし平生からそのすわり所や寝所に対してひどく気むずかしいこの猫は、そのような慣れない産室に一刻も落ち着いて寝てはいなかった。