Japanische Klassiker mit Furigana
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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
Lesen Sie 尾崎士郎短篇集 (あきかぜとはは) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.032 Zeichen · 216 Bildschirme
南里君が寺へゆきはじめてからやっと一ト月にも充たないのであるが、しかし、その間に娘の肉体は異常な発達を示した。それはちょうど梅雨の頃の枇杷の実が一日ごとに色づいてゆくのを見ていると同じように、南里君は娘に対して新鮮な食慾を感じた。炉をかこんで話をしているとき、南里君は鈍い電灯のほかげの中に、じっとおびえるように自分を見据えている娘の視線を捉える瞬間があった。その視線は一晩中彼を追っ駈けてきた。彼女の肉体の微細な部分についての想像が彼を悩ました。あの娘は自分の近づいてゆくのを待っているのだ、――と、南里君は思った。彼は自分の頭の上にぶら下っている木の実を空想した。若しそれをとろうとするならば、彼は背伸びをする必要もなく、唯、手をのばしさえすれば足りるのではないか。機会は幾度びとなく彼の前を往復した。しかし、そのたびごとに南里君は妙に心のすくむのを感じた。そして、娘はだんだん色づいていった。――
その娘のことが、不意に南里君の頭にこびりついてきたとしても少しも不思議ではない。南里君の空想は異常な速度で発展していった。今こそ、おれは何でも出来るぞ、――と、彼は思った。