Japanische Klassiker mit Furigana
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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
Lesen Sie 尾崎士郎短篇集 (あきかぜとはは) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.032 Zeichen · 216 Bildschirme
わたくしがぞくぞくっとする寒さに身ぶるいしたとき、いよいよ十一人目のあのひとが看守にみちびかれて入ってきたのでございます。最初わたくしの眼には、まるで血の気をうしなった蒼白い顔だけがぼうっとうかびあがりました。それが空間にゆれているように見えたのです。その眼と向いあったときわたくしは思わずぎょっとして立ちすくみました。こんなに異様な輝きにみちている人間の眼をわたくしは今まで一ぺんも見たことがございません。どのような大犯罪人にもいよいよという間際には救いとあきらめとがおびえている心をやすらかにする瞬間があるものでございます。希望をうしないつくした人間にはあたらしい絶望の落ちつきがあるものです。ところが、――ああわたくしは今でもそのときのあのひとの眼の色をありありと思い描くことができます。わたくしはあのひとと向い合ったとき、一つのことを理解しました。これは絶望に顫えている眼ではない。これは絶望しきれぬおそろしさに悩みぬいている眼だ。――そう思ったとき、典獄が、大へん気がせいていたせいでもございましょう、ちらっと時計をながめてから低い声で、
「金近さん!」