Japanische Klassiker mit Furigana
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あずさがわのじょうりゅう
山岳紀行文集 日本アルプス
小島 烏水
Lesen Sie 山岳紀行文集 日本アルプス (あずさがわのじょうりゅう) von 小島 烏水 (こじまうすい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.795 Zeichen · 274 Bildschirme
倍も広くなったような気がする。曙の色は林の中まで追いついて、木膠や蔦の紅葉の一枚一枚に透き徹る明る味を潮して、朝の空気は、醒めるように凛烈となった。
中の茶屋へ着くと、松虫草の紫は、見る影もなく褪せているが、鳥冑草は濃紫に咲いている、そして金屏風を背後にした菊花のように、この有毒植物の、刺戟強い濃紫は、焼砂の大壁を背景にして、荒廃の中に、一点の情火を、執念くも亡ぼさずにいる。
太郎坊へ着いて見ると、戸は厳重に釘づけにされ、その上に材木を筋交えに抑えにして、鋼線で結びつけてあるが、寂ッそりとして、人の気はなく、案内者の咳払いが、沈んだ空気を乱しただけだ。
東方を顧れば、箱根足柄にかぶさる雲から、雨脚のような光線が流れて、大裾野は扇の地紙のように、森や小阜の折目を正しくして、黄色に展開している。朝の霧が、方々から烟のように這っているほど、快晴であるが、一合目辺をカッキリ境界線にして、頭上の富士山は、雲のためにまるで見えず、天上の空次第に低く垂れて、屋根の上を距ること僅に三尺。
私は山を包む濃雲に絶望しながらも、屋根へ這い上って、虚空を見ていると、眼の前を灰色の霧は、渦巻いて、髯を伝わる呼吸が、雫となってポタポタ落ちる、鉛筆をポッケットから出して、弟が寒暖計を見て報告する温度を、手帖に記していると、傍から鉛筆