Japanische Klassiker mit Furigana
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ひゃくものがたり
山椒大夫・高瀬舟
Lesen Sie 山椒大夫・高瀬舟 (ひゃくものがたり) von Mori Ōgai (森 鴎外) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.466 Zeichen · 92 Bildschirme
その芸者は少し体を屈めて据わって、沈んだ調子の静かな声で、只の娘らしい話振をしていたが、島田に結った髪の毛や、頬のふっくりした顔が、いかにも可哀らしいので、僕が傍の人に名を聞いて見たら、「君まだ太郎を知らないのですか」と、その人がさも驚いたような返事をした。
太郎が芸者らしくないと云う感じは、その時から僕にはあったのだが、きょう見ればだいぶ変っている。それでもやはり芸者らしくはない。先きの無邪気な、娘らしい処はもうなくなって、その時つつましい中にも始終見せていた笑顔が、今はめったに見られそうにもなくなっている。一体あんなに飽くまで身綺麗にして、巧者に着物を着こなしているのに、なぜ芸者らしく見えないのだろう。そんならあの姿が意気な奥様らしいと云おうか。それも適当ではない。どうも僕にはやはりさっき這入った時の第一の印象が附き纏っていてならない。それはふと見て病人と看護婦のようだと思った。あの刹那の印象である。
僕がぼんやりして縁側に立っている間に、背後の座敷には燭台が運ばれた。まだ電燈のない時代で、瓦斯も寺島村には引いてなかったが、わざわざランプを廃めて蝋燭にしたのは、今宵の特別な趣向であったのだろう。