Japanische Klassiker mit Furigana
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ひゃくものがたり
山椒大夫・高瀬舟
Lesen Sie 山椒大夫・高瀬舟 (ひゃくものがたり) von Mori Ōgai (森 鴎外) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.466 Zeichen · 92 Bildschirme
火事にも逢わずに、だいぶ久しく立っている家と見えて、頗ぶる古びが附いていた。柱なんぞは黒檀のように光っていた。硝子の器を載せた春慶塗の卓や、白いシイツを掩うた診察用の寝台が、この柱と異様なコントラストをなしていた。
この卓や寝台の置いてある診察室は、南向きの、一番広い間で、花房の父が大きい雛棚のような台を据えて、盆栽を並べて置くのは、この室の前の庭であった。病人を見て疲れると、この髯の長い翁は、目を棚の上の盆栽に移して、私かに自ら娯むのであった。
待合にしてある次の間には幾ら病人が溜まっていても、翁は小さい煙管で雲井を吹かしながら、ゆっくり盆栽を眺めていた。
午前に一度、午後に一度は、極まって三十分ばかり休む。その時は待合の病人の中を通り抜けて、北向きの小部屋に這入って、煎茶を飲む。中年の頃、石州流の茶をしていたのが、晩年に国を去って東京に出た頃から碾茶を止めて、煎茶を飲むことにした。盆栽と煎茶とが翁の道楽であった。
この北向きの室は、家じゅうで一番狭い間で、三畳敷である。何の手入もしないに、年々宿根が残っていて、秋海棠が敷居と平らに育った。その直ぐ向うは木槿の生垣で、垣の内側には疎らに高い棕櫚が立っていた。