Japanische Klassiker mit Furigana
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ひゃくものがたり
山椒大夫・高瀬舟
Lesen Sie 山椒大夫・高瀬舟 (ひゃくものがたり) von Mori Ōgai (森 鴎外) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.466 Zeichen · 92 Bildschirme
花房が大学にいる頃も、官立病院に勤めるようになってからも、休日に帰って来ると、先ずこの三畳で煎茶を飲ませられる。当時八犬伝に読み耽っていた花房は、これをお父うさんの「三茶の礼」と名づけていた。
翁が特に愛していた、蝦蟇出という朱泥の急須がある。径二寸もあろうかと思われる、小さい急須の代赭色の膚に Pemphigus という水泡のような、大小種々の疣が出来ている。多分焼く時に出来損ねたのであろう。この蝦蟇出の急須に絹糸の切屑のように細かくよじれた、暗緑色の宇治茶を入れて、それに冷ました湯を注いで、暫く待っていて、茶碗に滴らす。茶碗の底には五立方サンチメエトル位の濃い帯緑黄色の汁が落ちている。花房はそれを舐めさせられるのである。
甘みは微かで、苦みの勝ったこの茶をも、花房は翁の微笑と共に味わって、それを埋合せにしていた。
或日こう云う対坐の時、花房が云った。
「お父うさん。わたくしも大分理窟だけは覚えました。少しお手伝をしましょうか」
「そうじゃろう。理窟はわしよりはえらいに違いない。むずかしい病人があったら、見て貰おう」
この話をしてから、花房は病人をちょいちょい見るようになったのであった。