Japanische Klassiker mit Furigana
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ひゃくものがたり
山椒大夫・高瀬舟
Lesen Sie 山椒大夫・高瀬舟 (ひゃくものがたり) von Mori Ōgai (森 鴎外) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.466 Zeichen · 92 Bildschirme
第八の娘は、藍染の湯帷子の袖と袖との間をわけて、井桁の傍に進み寄った。
七人の娘は、この時始てこの平和の破壊者のあるのを知った。
そしてその琥珀いろの手に持っている、黒ずんだ、小さい杯を見た。
思い掛けない事である。
七つの濃い紅の唇は開いたままで詞がない。
蝉はじいじいと鳴いている。
良久しい間、只蝉の声がするばかりであった。
一人の娘がようようの事でこう云った。
「お前さんも飲むの」
声は訝に少しの嗔を帯びていた。
第八の娘は黙って頷いた。
今一人の娘がこう云った。
「お前さんの杯は妙な杯ね。一寸拝見」
声は訝に少しの侮を帯びていた。
第八の娘は黙って、その熔巌の色をした杯を出した。
小さい杯は琥珀いろの手の、腱ばかりから出来ているような指を離れて、薄紅のむっくりした、一つの手から他の手に渡った。
「まあ、変にくすんだ色だこと」
「これでも瀬戸物でしょうか」
「石じゃあないの」
「火事場の灰の中から拾って来たような物なのね」
「墓の中から掘り出したようだわ」
「墓の中は好かったね」
七つの喉から銀の鈴を振るような笑声が出た。
第八の娘は両臂を自然の重みで垂れて、サントオレアの花のような目は只じいっと空を見ている。