Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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げんじゅつてんまたろう

幻術天魔太郎

野村 胡堂

Lesen Sie 幻術天魔太郎 (げんじゅつてんまたろう) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.616 Zeichen · 90 Bildschirme

Aozora Bunko

腹から下は、銀色のうつくしい魚体、それが、月子とお千代の仮装したかわいらしい人魚すがたとは知るよしもありません。伊豆守信綱は、ただ、人魚の体温が、あたたかいのにキモをつぶしただけです。

「頭が高いぞ、信綱ッ」

その伊豆守の頭のうえから叱咤の声、ハッとふりあおぐと、二匹の怪魚をともなった白衣金冠の荒々しい海神が伊豆守を見おろしてサッと鉾をふるのです。

「なにもの?」

「名のってやろう、大納言忠長の一子駿河太郎ならびにその妹の月子、なんじをひっ捕えて、龍宮城の白州に頭をうずめさせるはたやすいことながら、しばらくは命を助けてつかわす。

将軍家光をいさめて、謝罪の誠をつくさばよし、さもなくば、家光ならびにその家来を、生きながら八寒地獄に追いおとして、いつの世までも苦しみをなめさせようぞ」

駿河太郎は鉾をのばして伊豆守の頭をコツンとたたくのです。左右の魚はさながらぢごくにいる鬼のすがた、それが野州の熊五郎と、小僧の虎吉とは、もとより知るよしもありません。

だが、この天下の老中に対するあるまじき侮辱は、いつまでもつづくはずもなく、やがて宿直のけらいが気がつき、殿中の大さわぎになりましたが、伊豆守の寝所に叱吃の声がつっぱしり、ゴウゴウと波の音がするくせに、四尺の大唐紙は鉄の扉のごとく厳重で、おせども引けども、ビクともすること