Japanische Klassiker mit Furigana
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おもいだすことなど
思い出す事など
Lesen Sie 思い出す事など (おもいだすことなど) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 57.003 Zeichen · 113 Bildschirme
するとそこに腰囲何尺とでも形容すべきほど大きな西洋人が、椅子に腰をかけてしきりに絵端書の表に何か認めていた。余は駅長に向って当用を弁ずる傍、思いがけない所に思いがけない人がいるものだという好奇心を禁じ得なかった。するとその大男が突然立ち上がって、あなたは英語を話すかと聞くから、嗄れた声でわずかにイエスと答えた。男は次にこれから京都へ行くにはどの汽車へ乗ったら好いか教えてくれと云った。はなはだ簡単な用向であるから平生ならばどうとも挨拶ができるのだけれども、声量を全く失っていた当時の余には、それが非常の困難であった。固より云う事はあるのだから、何か云おうとするのだが、その云おうとする言葉が咽喉を通るとき千条に擦り切れでもするごとくに、口へ出て来る時分には全く光沢を失ってほとんど用をなさなかった。余は英語に通ずる駅員の助を藉りて、ようやくのことこの大男を無事に京都へ送り届けた事とは思うが、その時の不愉快はいまだに忘れない。
修善寺に着いてからも咽喉はいっこう好くならなかった。医者から薬を貰ったり、東洋城の拵えてくれた手製の含漱を用いたりなどして、辛く日常の用を弁ずるだけの言葉を使ってすましていた。