Japanische Klassiker mit Furigana
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おもいちがいものがたり
思い違い物語
山本 周五郎
Lesen Sie 思い違い物語 (おもいちがいものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 44.840 Zeichen · 88 Bildschirme
の処理については、藩譜にも、はっきりした記述がない。おそらく長い年月のあいだに、そこは宜しく片づいたものであろうし、べっしてわれわれが心配すべき筋合でもないだろう。……この騒ぎがいちおう鎮静したのは五月のことであるが、その中旬の或る日、右衛門は泰三を呼んで、
「実は相談があるのだが」と、ひどくまじめに云いかけた、「――ざっくばらんに云ってしまうが、典木の家は立派に再興したことでもあるし、ひとつこの辺で、おまえにこの山治の家を継いで貰いたいのだが、どうだろう」
「私にですか、私にこの山治家を」
「つまり婿養子になって貰いたいわけだ」右衛門はここで渋いような顔をした、「――これはわしの意見というより、娘がそう望むので、どうしてもそうしたいとせがむので、まあ、やむを得ず相談するわけなんだが」
「それは困ります、それは困るんです」
泰三もまじめに首を振った。
「なぜかというと、ばあいがばあいですから申上げますが、私には約束した者がありまして、どうもそれを反故にするというわけにはまいらないのです」
彼がそう云いかけたとき、襖の向うでわっと女の泣く声が起こり、ばたばたと走り去る足音が聞えた。