Japanische Klassiker mit Furigana
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おもいちがいものがたり
思い違い物語
山本 周五郎
Lesen Sie 思い違い物語 (おもいちがいものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 44.840 Zeichen · 88 Bildschirme
玄関の屋根の上に若侍が一人いて、妙な、こっちがてれるような腰つきで、踊りでも踊るような恰好をしながら、たいへんおうふうな口ぶりでどなっていた。
「いい年をして不注意じゃないか、侍は常に用心を旨としなければならない、軒下なんぞを歩くときには特に気をつけないと、いつ屋根から瓦などが落ちて来ないとも限らない、またこの屋根がばかげて古い、瓦なんぞみんなずれているんだから、ええ畜生」
「なに者だ、きさまは」右衛門は片方の足で地面を叩いた、「――なんだ、そこでなにをしているんだ、きさまは誰だ、この……」
そして振返って、下僕の多助に向って、あのくわせ者を引摺り下ろせと命じた。
屋上の若侍はびくりとした。そのときわかったのだが、彼は玄関脇の朴の木の枝に凧をひっかけたので、それを破らないように取ろうとしていたのであるが、眼下の老人の正々堂々たる怒り声と、その怒りのために赤くなった顔を見て、これはたいへんだと思ったらしい。
――これはこの家の主人に違いない。
こう気がついたものだろう、そこで、持っていた凧糸は放さずに、危なっかしい腰つきで屋上から敬礼を送り、「これはどうも、失礼を致しました、知らなかったものですから、山治のおじ上ですか」