Japanische Klassiker mit Furigana
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こいのでんしちろう
恋の伝七郎
山本 周五郎
Lesen Sie 恋の伝七郎 (こいのでんしちろう) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 29.650 Zeichen · 60 Bildschirme
なり打合せどおり裏道をとって馳け出した。
馳けだすまではそうでもなかったが、馳けだすと間もなく二人とも恐ろしく怖くなってきた。さっきの下僕は家のある所へゆくなり喚きちらしたに相違ない。この城下でこんな出来事は稀だし、まだ宵のことだし、聞いた者はみんなとびだして来るだろう、すぐに籔小路へ馳けつける、番所へ知らせる、沖田へはもちろん役人へも告げに走る、むやみやたらに手をまわして、四方八方から追っかけて来るだろう、提灯、追詰めて来る足音、その叫び声など、そのありさまがまざまざと眼に見えるようだった。それでやたらに馳けつづけた、けれど例え娘でも人間ひとりそう軽くはない、こいつを担いで休みなしに馳けるというのは無理である。しかも闇夜のことで道を迷い、定めて置いた逃げ口から外れたりしたので、広い田圃へかかる林の中の道まで来ると、もう意地にも我慢にも馳けられなくなった。「伝さん休もう、おらあ死にそうだ」「おれも息が止りそうだ、まいった」「いやここで下ろしちゃあいけねえ、向うにお堂みてえなものがある、あすこへいって休もう、道の上じゃあ追手の眼につくから」