Japanische Klassiker mit Furigana
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ばしゃ
愛の挨拶・馬車・純粋小説論
横光 利一
Lesen Sie 愛の挨拶・馬車・純粋小説論 (ばしゃ) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 40.699 Zeichen · 78 Bildschirme
しかし、由良は多額の金銭を所持して一年の間ぶらぶらしていることはとうてい出来る身分ではない。そればかりではなく、彼によりすがって生活しなければならない小さな弟や母まで後ろにひかえているのだから、医者の言葉は由良にとってはひどく無慈悲なものに感じられた。由良はその日から暫くの間は、眼を使わなければならぬ仕事や遊びやその他の行動はなるだけしないように気をつけて、専ら眼を瞑ったまま音の世界を身近にひきよせるような工夫をしようとした。音ならこれには今までからあまり由良の頭は刺戟せられて来ていないので、眼の世界に刺戟せられるよりも、はるかに頭脳を休めるにちがいないと思われたからである。或る日、彼は多木が彼のところへ遊びに来たのでそのことを話すと、それでは自分の家の近所に人に知られていない温泉があるから、癒るまでそこに居るよう、費用は家へは払わずに直接自分の所へ送れと自由なことを云ってくれたので、早速由良は多木の紹介で彼の家へ出かけることにした。
そうでもしなければ、自分の頭の悪い部分で自分の頭の悪い部分が良いか悪いかと考え続けるそのことすでに、頭を一層悪くしていくばかりなのだから、彼の狭い部屋にじっとしている限りは、いつまでたっても頭は癒らないにちがいなかった。