Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あるおんな

或る女

有島 武郎

Lesen Sie 或る女 (あるおんな) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 205.655 Zeichen · 406 Bildschirme

Aozora Bunko

「あなた釣り竿は」

「釣り竿ですか……釣り竿は水の上に浮いてるでしょう。いまにここまで流れて来るか……来ないか……」

そう応えて案外上手に舟を漕いだ。倉地は行き過ぎただけを忙いで取って返して来た。そして三人はあぶなかしく立ったまま舟に乗った。倉地は木部の前も構わずわきの下に手を入れて葉子をかかえた。木部は冷然として竿を取った。三突きほどでたわいなく舟は向こう岸に着いた。倉地がいちはやく岸に飛び上がって、手を延ばして葉子を助けようとした時、木部が葉子に手を貸していたので、葉子はすぐにそれをつかんだ。思いきり力をこめたためか、木部の手が舟を漕いだためだったか、とにかく二人の手は握り合わされたまま小刻みにはげしく震えた。

「やっ、どうもありがとう」

倉地は葉子の上陸を助けてくれた木部にこう礼をいった。

木部は舟からは上がらなかった。そして鍔広の帽子を取って、

「それじゃこれでお別れします」

といった。

「暗くなりましたから、お二人とも足もとに気をおつけなさい。さようなら」

と付け加えた。

三人は相当の挨拶を取りかわして別れた。一町ほど来てから急に行く手が明るくなったので、見ると光明寺裏の山の端に、夕月が濃い雲の切れ目から姿を見せたのだった。