Japanische Klassiker mit Furigana
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あるおんな
或る女
有島 武郎
Lesen Sie 或る女 (あるおんな) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 205.655 Zeichen · 406 Bildschirme
切り下げにした厚い黒漆の髪の毛の下にのぞき出した耳たぶは霜焼けでもしたように赤くなって、それを見ただけでも、貞世は何か興奮して向こうを向きながら泣いているに違いなく思われた。覚えがないではない。葉子も貞世ほどの齢の時には何か知らず急に世の中が悲しく見える事があった。何事もただ明るく快く頼もしくのみ見えるその底からふっと悲しいものが胸をえぐってわき出る事があった。取り分けて快活ではあったが、葉子は幼い時から妙な事に臆病がる子だった。ある時家族じゅうで北国のさびしい田舎のほうに避暑に出かけた事があったが、ある晩がらんと客の空いた大きな旅籠屋に宿った時、枕を並べて寝た人たちの中で葉子は床の間に近いいちばん端に寝かされたが、どうしたかげんでか気味が悪くてたまらなくなり出した。暗い床の間の軸物の中からか、置き物の陰からか、得体のわからないものが現われ出て来そうなような気がして、そう思い出すとぞくぞくと総身に震えが来て、とても頭を枕につけてはいられなかった。で、眠りかかった父や母にせがんで、その二人の中に割りこましてもらおうと思ったけれども、父や母もそんなに大きくなって何をばかをいうのだといって少しも葉子のいう事を取り上げてはくれなかった。