Japanische Klassiker mit Furigana
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あるおんな
或る女
有島 武郎
Lesen Sie 或る女 (あるおんな) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 205.655 Zeichen · 406 Bildschirme
貞世は葉子に注意されて物惰げに少し目をそらして倉地と岡とのいるほうを見たが、それがどうしたんだというように、少しの興味も見せずにまた葉子を見入りながらせっせと肩をゆすって苦しげな呼吸をつづけた。
「おねえさま……水……氷……もういっちゃいや……」
これだけかすかにいうともう苦しそうに目をつぶってほろほろと大粒の涙をこぼすのだった。
倉地は陰鬱な雨脚で灰色になったガラス窓を背景にして突っ立ちながら、黙ったまま不安らしく首をかしげた。岡は日ごろのめったに泣かない性質に似ず、倉地の後ろにそっと引きそって涙ぐんでいた。葉子には後ろを振り向いて見ないでもそれが目に見るようにはっきりわかった。貞世の事は自分一人で背負って立つ。よけいなあわれみはかけてもらいたくない。そんないらいらしい反抗的な心持ちさえその場合起こらずにはいなかった。過ぐる十日というもの一度も見舞う事をせずにいて、今さらその由々しげな顔つきはなんだ。そう倉地にでも岡にでもいってやりたいほど葉子の心はとげとげしくなっていた。で、葉子は後ろを振り向きもせずに、箸の先につけた脱脂綿を氷水の中に浸しては、貞世の口をぬぐっていた。