Japanische Klassiker mit Furigana
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あるおんな
或る女
有島 武郎
Lesen Sie 或る女 (あるおんな) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 205.655 Zeichen · 406 Bildschirme
その倉地が妻や娘たちに取り巻かれて楽しく一夕を過ごしている。そう思うとあり合わせるものを取って打ちこわすか、つかんで引き裂きたいような衝動がわけもなく嵩じて来るのだった。
それでも倉地が帰って来ると、それは夜おそくなってからであっても葉子はただ子供のように幸福だった。それまでの不安や焦躁はどこにか行ってしまって、悪夢から幸福な世界に目ざめたように幸福だった。葉子はすぐ走って行って倉地の胸にたわいなく抱かれた。倉地も葉子を自分の胸に引き締めた。葉子は広い厚い胸に抱かれながら、単調な宿屋の生活の一日中に起こった些細な事までを、その表情のゆたかな、鈴のような涼しい声で、自分を楽しませているもののごとく語った。倉地は倉地でその声に酔いしれて見えた。二人の幸福はどこに絶頂があるのかわからなかった。二人だけで世界は完全だった。葉子のする事は一つ一つ倉地の心がするように見えた。倉地のこうありたいと思う事は葉子があらかじめそうあらせていた。倉地のしたいと思う事は、葉子がちゃんとし遂げていた。茶わんの置き場所まで、着物のしまい所まで、倉地は自分の手でしたとおりを葉子がしているのを見いだしているようだった。