Japanische Klassiker mit Furigana
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あるしょうじょのしまで
或る少女の死まで 他二篇
室生 犀星
Lesen Sie 或る少女の死まで 他二篇 (あるしょうじょのしまで) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.554 Zeichen · 228 Bildschirme
若いころに妻をうしなってから、一人の下男と音のない寂しい日をくらしていた。茶を立てる日になると、井戸水はきめが荒くていけないというので、朝など、
「お前御苦労だがゴミのないのを一杯汲んで来ておくれ。」
私がうるさく思いはせぬかと気をかねるようにして、いつも裏の犀川の水を汲みにやらせた。東京では隅田川ほどあるこの犀川は、瀬に砥がれたきめのこまかな柔らかい質に富んでいて、茶の日には必要欠くことのできないものであった。私はそんなとき、手桶をもって、すぐ磧へ出てゆくのであった。庭から瀬へ出られる石段があって、そこから川へ出られた。
この犀川の上流は、大日山という白山の峯つづきで、水は四季ともに澄み透って、瀬にはことに美しい音があるといわれていた。私は手桶を澄んだ瀬につき込んで、いつも、朝の一番水を汲むのであった。上流の山山の峯うしろに、どっしりと聳えている飛騨の連峯を靄の中に眺めながら、新しい手桶の水を幾度となく汲み換えたりした。汲んでしまってからも、新しい見事な水がどんどん流れているのを見ると、いま汲んだ分よりも最っと鮮かな綺麗な水が流れているように思って、私は神経質にいくたびも汲みかえたりした。