Japanische Klassiker mit Furigana
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あるしょうじょのしまで
或る少女の死まで 他二篇
室生 犀星
Lesen Sie 或る少女の死まで 他二篇 (あるしょうじょのしまで) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.554 Zeichen · 228 Bildschirme
この朝ごとの時刻には向河岸では、酒屋の小者の水汲みが初まっていた。小者はみな裸体になってあふれるほど汲んだ二つの手桶を天びんにかついで、街の方へ行った。静かな朝など、桶からはみ出た水が光って、まるで白刃のように新しい朝日に輝いていた。私の故郷にはこの川の水から造られた「菊水」という美しい味をたたえた上品なうまい酒がとれた。
この磧からは私の住む寺院がよく見えた。二本の高い栂の樹をその左右にして、本堂を覆うた欅や楓の大樹のひろがった、枝は川の方へ殆んど水面とすれすれに深く茂り込んでいた。そこは、用水から余った瀬尻が深く水底を穿ってどんよりと蒼蒼しい淵をつくっていた。鮎や石斑魚などを釣る人が、そこの蛇籠に跼んで、黙って終日釣り暮すのを見受けることがあった。
父は私の汲んで来た一番水を毎時もよく洗われた真鍮の壺に納めて、本堂へ供えた。それを日の入りには川へ流すのが例になっていた。あとの水は、茶の釜にうつした。午前九時ごろになると、釜は、父の居間で静かに鳴りはじまって、ことに冬など、襖越しにそれが遠い松風のように、文字通り時雨の過ぎ去ってゆくような音を立てた。