Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 185.353 Zeichen · 371 Bildschirme
竹編戸があるばかりだ。風に揺々とうごいて半ば開いている。
「……これは広い」
藤吉郎は、黙ってはいりこんだ。そこから中が松ばやしである。門から奥のほうまで細道がついている。松落葉のこぼれているほか、塵一つない感じである。
小半町もすすむと、ようやく、家らしいものがあった。
牛が啼いている。
牛部屋があるとみえる。
パチパチと火のはぜる音がして、煙がその辺りから、立ちこめてくる。藤吉郎は立ちどまった。沁みる目をこすっていたのである。
しかし、一陣の山風がくると、煙はさっときれいに拭い去られてしまう。見れば、竃小屋で一人の童子が、竃の下へ枯杉など焚きつけているのだった。
「誰だッ?」
童子は、そこに佇んでいる藤吉郎の影を見つけると、怪しんで寄って来た。
「お召使か」
「おらか。……そうだよ」
「自分は尾州織田家の臣、木下藤吉郎というものだが、お取次をねがいたい」
「誰にさ」
「御主人に」
「いないよ。お留守だよ」
「…………」
「ほんとにお留守だってば」
「…………」
「お帰り」
童子は、去ってまた、竃の前にすわりこむと、薪などくべて、振り向きもしない。
山上の夜霧は冷やかだった。