Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 185.353 Zeichen · 371 Bildschirme
ところが、その小康状態は、夏の終りまで持たなかった。
七月の盂蘭盆会をすぎるとすぐ聞えてきた。小牧山から尾張の各郡への飛札の使いが頻々と飛ぶ。
近く、大兵を催す模様らしい。
城下も何となく色めいている。旅人の検察はきびしくなった。臣下の深夜登城も多い。馬匹の徴発が行われた。具足師へ修理に出してある鎧や物の具を家中の侍はみな催促に争っている。等、等、等、相次ぐ情報なのである。
「信長は」
そこを質すと、
「いや、城内は相かわらずで、深更まで狭間に明々と燈火が望まれ、どうかすると濠水に、悠長な能管の音や小鼓の鳴りひびいていたりすることもありますが」
と、小牧山の城下から帰って来た諜報の者も、確たる自信はないようなことをいう。
それが、月の末、八月に近づくと、俄然、
「信長の兵、大挙して、およそ一万余、続々と西上。木曾川の東岸一帯に陣し、洲股城を根城として、今にも、押し渡らんず気勢に見えますぞ」
と、なった。
時流に驚かない無関心に狎れている人間は、驚くとなると、驚くのに極端である。
龍興は、誰よりも、躁ぎたてて、まだ適当な対策を持たない老臣重臣の面々を、一層、狼狽させた。