Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 185.353 Zeichen · 371 Bildschirme
「やはり幼い時から、どこか日吉どのは違っていたからのう」
などとにわかに、彼の母は、村の者の追従や世辞につつまれたものだった。
そうした郷土の人々は、藤吉郎のはなしをするにも、養父の筑阿弥のことは、おくびにも口に出さなかった。かえって、
「――弥右衛門どのが生きてござったらなあ」
と、みないった。
藤吉郎が、筑阿弥の実子ではなくて、先夫の木下弥右衛門の子だということは、中村の者は誰でも知っているからである。
しかし、その実父についても、後の継父についても、藤吉郎が今日、余り口に出さないのは、
「いうては、母上が、人知れずお辛かろう」
と、母の胸のうちを思い遣っているからであった。
それは、後になって、城内の家臣たちにも、無言のうちに分った。
老母と寧子が、洲股へ移ってから翌月のこと。
藤吉郎の家庭にはまた、三人の肉親が来て、ひとつに暮すことになった。
その一人は、姉のおつみ。
それから義弟の小竹と、末の義妹とであった。
おつみはもう三十になろうとしていた。しかもまだ嫁がない身であった。藤吉郎はこの姉に、約束がある。
(おっ母を頼むよ。おらが偉くなったら、姉やに、繻珍の帯を買って、きっと、お嫁入りさせてやる)