Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.903 Zeichen · 400 Bildschirme
折り入って御対談あそばしたいとの御意に、時ならぬお迎えが参られました」
「お、そうか」
何のためらいもなく、光春はすぐ寝床を出た。顔を洗い、うがいをすませ、髪には笄を与えた。そして衣服を改めながら、
「いま、何刻か」
と、たずねた。
「子の上刻でございます」
「三更か」
室を出る。廊は暗い。その墨のような廊の杉戸口に踞まっている髪の白い人影を見て、光春はさらにこの時ならぬ迎えの容易ならぬことを察した。迎えの者は光秀の側近くいる常の小侍でもなかった。老臣の斎藤内蔵助利三である。
「御老体か」
「……おお、これは」
「深更に大儀だな」
利三は紙燭を持って先に立つ。幾巡りする廻廊の長い間行き合う人もない。
本丸もまた寝しずまっていた。しかし奥の限られた一劃だけには、ただならぬ気が充ちていた。二、三の部屋にも人の起きているらしい様子があった。
「お座所は」
「夜のお間でございます」
利三は、寝所の畳廊下の口で、紙燭を消した。そして光春へ促すような眼をしながらそこの重い戸を開けた。
光春が入ると、すぐ後は閉められた。寝室までになお三つの部屋があった。そのいちばん奥にだけ仄青い燭の光が洩れている。