Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.903 Zeichen · 400 Bildschirme
「そこらに、清水が湧いているな。ちょろちょろ水音がするが」
一万三千という大部隊では、列の末の方は、まだ頂上に遠い坂道の途中に歩を止めていた。組々の部将は当然近くにいるが、中軍の幕将や光秀のすがたは伸び上がっても遥かで見えない。――命令もなし、何のために行軍が停頓しているのか、もちろん足軽組あたりには分らなかった。
「あった。……水がある」
ひとりが、道に沿っている崖の肌を探って、ようやく暗がりの岩蔭に小さいせせらぎを見つけると、われもわれもと、そこへ寄って、竹の水筒へ清水を満たした。
「これで天神馬場までは助かる」
「兵糧は山崎か。いや夜が短いから、海印寺あたりで暁けるだろうな」
「日中は馬も疲れるから、なるべく夜のうち朝のうちに、道を捗るお考えではないかな」
「そうありたいものだ。中国までは」
足軽たちはもとよりそれ以上の士分でも、物頭格の部将以外、まだ何も知らなかった。
戦場はまだ遠い――としていたのである。組頭の耳に入らぬ程度の囁きや笑い声はそのゆとりを現わしている。中で一名、腹痛を訴えている兵があった。出陣早々もう病苦を訴えるのは何事だと同僚たちが咎めつつも励ますと、