Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 176.911 Zeichen · 353 Bildschirme
「勝入は、これにあるぞ。みにくい退きかたをするなッ。日頃をわすれたか。返せッ返せッ」
しかし、かれの左右にいた黒母衣五十人組も、老臣や諸頭たちも、ひとたび崩れ立っては、逃げ足が止まらなかった。かえって、まだ年ごろも十五、六の、いじらしげな小姓などが、おろおろ、かれの腰について、
「お馬を召しませ。大殿、お馬を召しませ」
と、迷い馬を、曳いて来て、懸命に主人にすすめていた。
勝入は、坂下のたたかいに、馬を鉄砲で撃たれ、いちど落馬して、敵兵にかこまれたが、必死に、斬りひらいて、ここまで登って来たのである。
「もう、馬はいらぬ。――床几をかせい。床几はないか」
「はいッ、これへ」
小姓は、かれのうしろへ、床几をすえた。勝入は、腰をおろして、
「四十九年の事、いま終る……」
と、ひとりつぶやき、まだ年少の小姓をながめて、
「そちは、白井丹後のせがれであったな。父も母も待っておろう、はやく犬山へ逃げてゆけ。……それっ、弾がとんでくるぞ。はやく去れ、はやく去れ」
と、泣き顔になるのを、追いやって、いまはかえって、ただ一人こそ、心やすしと、悠然、最後のこの世の景色を、うち眺めていた。