Japanische Klassiker mit Furigana
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しんじゅのことば
新樹の言葉
Lesen Sie 新樹の言葉 (しんじゅのことば) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 29.156 Zeichen · 59 Bildschirme
とにかく雨にこんなに濡れては、かなわないので、私は、そっと豆腐屋の軒下に難を避けて、
「こちらへいらっしゃい。雨が、ひどくなりました。」
「ええ。」と素直に、私と並んで豆腐屋の軒下に雨宿りして、「津軽でしょう?」
「そうです。」自分でも、はっと思ったほど、私は不気嫌な答えかたをしてしまった。片言半句でも、ふるさとのことに触れられると、私は、したたか、しょげるのである。痛いのである。
「それじゃ、たしかだ。」郵便屋は、桃の花の頬に、靨を浮べて笑った。「あなたは幸吉さんの兄さんです。」
私は、なぜか、どきっとした。いやな気がした。
「へんなことを、おっしゃいますね。」
「いいえ、もう、それに違いないのです。」ひとりで、はしゃいで、「似ていますよ。幸吉さん、よろこぶだろうなあ。」
つばめのように、ひらと身軽に雨の街路に躍り出て、
「それじゃ、あとでまた。」少し走って、また振りかえり、「すぐに幸吉さんに知らせてあげますから、ね。」
ひとり豆腐屋の軒下に、置き残され、私は夢みるようであった。白日夢。そんな気がした。ひどくリアリティがない。ばかげた話である。とにかく、銭湯まで一走り。