Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんじゅのことば

新樹の言葉

太宰 治

Lesen Sie 新樹の言葉 (しんじゅのことば) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 29.156 Zeichen · 59 Bildschirme

Aozora Bunko

見知らぬ他人から、兄さん、おなつかしゅう、など言われて、ふざけた話だ。いやらしい。なまぬるく、べとべとして、喜劇にもならない。無智である。安っぽい。

がまんできぬ屈辱感にやられて、風呂からあがり、脱衣場の鏡に、自分の顔をうつしてみると、私は、いやな兇悪な顔をしていた。

不安でもある。きょうのこの、思わぬできごとのために、私の生涯が、またまた、逆転、てひどい、どん底に落ちるのではないか、と過去の悲惨も思い出され、こんな、降ってわいた難題、たしかに、これは難題である、その笑えない、ばかばかしい限りの難題を持てあまして、とうとう気持が、けわしくなってしまって、宿へかえってからも、無意味に、書きかけの原稿用紙を、ばりばり破って、そのうちに、この災難に甘えたい卑劣な根性も、頭をもたげて来て、こんなに不愉快で、仕事なんてできるものか、など申しわけみたいに呟いて、押入れから甲州産の白葡萄酒の一升瓶をとり出し、茶呑茶碗で、がぶがぶのんで、酔って来たので蒲団ひいて寝てしまった。これも、なかなか、ばかな男である。

宿の女中に起された。

「もし、もし、お客さんですよ。」