Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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にちにちへいあん

日日平安

山本 周五郎

Lesen Sie 日日平安 (にちにちへいあん) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.297 Zeichen · 56 Bildschirme

Aozora Bunko

「どうもそれは、たしかとはいえないようですが」と十郎太が口ごもった、「――ほかに手はないですか」

「問題は時間ですからね」

こう云って、それから突然「あっ」と菅田平野は声をあげた。彼は本能的に鼻の穴へ指をもっていったが、鼻毛を抜くのはやめ、その手を拳にして自分の額を叩いた。

「なんという頓馬だろう」と彼は云った、「このおれはなんという頓馬の、へぼ頭だろう、自分で自分を忘れているとはあきれはてたものだ」

「なにかあるんですか」

「この私ですよ」と菅田平野は云った、「――私自身が密書になるんです」

みんなけげんな顔をした。

「こうです」と彼は続けた、「私はごらんのとおり尾羽うち枯らした姿です、この私が黒藤邸へいって密告するんです、宿賃がないので寺の縁下に寝たと云ってもいいでしょう、そこで密会している貴方がたの密談を聞いた、耳にはさんだ名前はこれこれ、どうです、これなら間違いはないでしょう」

十郎太は寺田に振返った。寺田文治は珍しく微笑したし、他の三人も頷いた。

「ではそれで計画をたて直しましょう」

菅田平野は書きかけの密書をひき裂いた。

新しい計画はこうである。