Japanische Klassiker mit Furigana
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てんかふん
日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二)
榎南 謙一
Lesen Sie 日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二) (てんかふん) von 榎南 謙一 (えなみけんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.963 Zeichen · 8 Bildschirme
天瓜粉
この兄が怖いか
おぼつかなげな眼をおずおずさせて
母の胸にあとしざりする
久しぶりに会う兄は
柿いろの獄衣
その傍には
肉親の談話を書きとめている無表情の立会看守
世馴れた大人でさえ
おびえるこのコンクリトの塀のなかへ
よくやってきてくれた、妹よ
兄はそんなに痩せてはいないだろう
ここでは
鰯が食える
豚肉のカレー汁が啜れる
痩せているのはお前だ
このごろのごはんに眼立つのは黒い麦粒だけだろう
高い年貢は
幼いお前までを押しひしぐのか
怖がらずに眼をあけな
兄の全身を縛っている眼に見えぬ鎖が見えぬか
お前にはかならず見える
こんなに痩せたお前に見えない筈があるものか
いつまでもこうしていたいのに
看守の靴がいらだたしげに床をすりつける
さよなら
お辞儀しやがった
ほんとにいじらしいやつ
接見室から出てゆくその後首に
はしかでもわずらったのか
天瓜粉が白く吹いている
暑さだから気をつけるんだよ
さよなら、さよなら、妹よ
おれは
焼けただれた煉瓦屋根の下へ帰ってゆく
さわやかな涼風に胸をふくらせて
――獄中詩篇のうち
(『詩精神』一九三四年九月号に発表 同年十月前奏社刊『一九三四年詩集』