Japanische Klassiker mit Furigana
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てんかふん
日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二)
榎南 謙一
Lesen Sie 日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二) (てんかふん) von 榎南 謙一 (えなみけんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.963 Zeichen · 8 Bildschirme
夜雲の下
自動車が動揺すると
細引で縛られたまま
私たちの肩と肩とがごつんとあたる
争議は敗れた
送られる私たちは胸の苦汁をどうすることが出来たろう
「あちらでは吸えないんだぜ」
一本ずつもらった最後の煙草
言いようのない感慨とともに
蒼いけむりを腹の底までのみ
でこぼこだらけの道路を揺られて行った
やがて陽は墜ちたのか
道路にかぶさる青葉がだんだん翳ってくる
うなだれている私たちは
そのとき
道路のただならぬざわめきに気づいた
号外の鈴が慌しく鳴りひびき
気色ばんだ人たちがそこここに群れ
何か声高に話し合っていた
「犬養さんが殺されたんだって」
そう教えてくれた男は哀しげな表情をしたが
顔を見合わせた私たちは
思わずきっと眉があがった
一九三二年五月十五日であった
日はとっぷりと昏れて
スピイドを増した自動車は
ますますひどい動揺に喘いだ
車輪の軋りだけは微かにきこえるが
いまはどこを走っているのか
車窓のセルロイドには
泥のようにぬるぬるした闇だけだ
劇しい疲れにうつらうつらとなりながらも
ともすれば私たちは
おびえたように幾度も眼をしばたたいた
恐怖はびっしょりと全身を濡らしてくる