Japanische Klassiker mit Furigana
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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
Lesen Sie 日本婦道記 (にほんふどうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.091 Zeichen · 30 Bildschirme
六
あなたは鈴木のむすめも同様なのですから、そんなときは意地を張らずに帰って来るのですよ、わたしはいつでもよろこんでお待ちしているのですからね」
お石は泣かなかった、少し蒼ざめた顔を俯向け、僅かに、はい、はいと答えるだけだった。平之丞にはそれがもう心もここにない者のようにみえた、そして母のために忿りを感じ、言葉を交わす気にもなれなかった。……お石はこうして京へ去った、信じられないほどあっさりと、まるで旅人が一夜の宿から立ってゆくかのように、さばさばとお石は鈴木家から去っていった。
六
平之丞がお石を忘れるまでにはかなりながい時日を要した。お石がいなくなってはじめて、彼女がどれほど無くてはならない存在だったか、自分にとってどんなに必要な者だったかということがわかった。結婚を申込むくらいだから、むろん単純に好きだというていどの気持ではなかった。然しそれほど根づよく、それほどはげしい感情を遺されようとは思わなかった。みっともない子の時代から、歌など詠みはじめた前後、松井の庭の宴で初めて眼を惹かれてのち、明け昏れに見馴れた姿、人の気づかないところに心のこもった家常茶飯の数かずのこと、稗だんごの味までが、在ったときよりは鮮やかになまなまと思いだされた。