Japanische Klassiker mit Furigana
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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
Lesen Sie 日本婦道記 (にほんふどうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.091 Zeichen · 30 Bildschirme
お石はそれを知っているのだろう、危ぶむような眼でじっとこちらを見あげている、それがひどく思い詰めたようすなので平之丞は苦笑した、そして、
「なくしてはいけないぞ」
と云って取ってやった。
父が帰ると間もなくから、お石は榁尚伯という和学者のもとへ稽古にかよいはじめて、その頃ではもう歌なども作るようになっていた。むろんまだ真似ごとの、ほんの字数がそろうくらいのものだったし、時どき母から「なかなかよく詠んでありますよ」と見せられるものも、平之丞にさえそれほど感心した記憶はなかった。そして、たぶんあの文鎮を置いて、しさいらしく歌集など読んでいるのだろうと思って苦笑した。そうしてたびたび歌を見せられるうち、或るとき萩を詠んだ一首があって、それに墨丸という名が記してあるのをみつけた。訊いてみると母は、
「それがあの子の雅号だそうですよ」
と云って笑った、
「色が黒いからそう付けたのですと、男のようでおかしいと云ったのだけれど、お師匠さまもおもしろいと仰しゃったそうで、それにきめたのだそうです」
「…………」
平之丞はふと心にかすかな痛みを感じた。字をみてすぐ思いだしたのだが、それはかつて彼がお石のために選んだ綽名である。