Japanische Klassiker mit Furigana
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にほんだっしゅつき
日本脱出記
大杉 栄
Lesen Sie 日本脱出記 (にほんだっしゅつき) von 大杉 栄 (おおすぎさかえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 76.254 Zeichen · 151 Bildschirme
差入れの食事もとれず、煙草も買えず、読む本もなし、となってからは、毎日ただベッドの上で寝てくらした。よくもこんなに寝れるものだと思ったくらいによく寝た。
真っぴる中寝床の中へなぞはいっていては悪いんじゃないかしらとも思ったが、叱られたら叱られたその時のことと思って、図々しく寝ていた。
が、日本の牢やとは違って、看守は滅多にのぞきに来なかった。朝起きるとすぐ、それも何の相図も号令もないのだが、看守が戸を開けて、中のごみを掃き出させる。それが一と廻り済むと、運動場へ連れて出た。それからは前に言った三度の食事にたべ物を窓口まで持って来るほかには、ほとんど誰もやって来ない。日本のようには、朝晩のいわゆる点検もない。ただ、夕方一度、昼の看守と交代になる夜の看守がちょっと室の中をのぞきに来るぐらいのものだ。
看守されているんだというような気持はちっともしない。本当に一人きりの、何の邪魔するものもない、静かな生活だ。
しかし、そうそう寝てばかりいれるものでもない。時々は起きて、室の中をぶらぶらもする。その時の僕の呑気な空想を助けたものは、四方の壁のあちこちに書き散らしてある落書だった。