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Japanische Klassiker mit Furigana

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にほんだっしゅつき

日本脱出記

大杉 栄

Lesen Sie 日本脱出記 (にほんだっしゅつき) von 大杉 栄 (おおすぎさかえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 76.254 Zeichen · 151 Bildschirme

Aozora Bunko

高い屋根のある大きな箱だ。中は真暗だ。僕は両手をゆわえられ、両腕や肩を握られながら、その片すみにあぐらをかいていた。

折々奴等の吸う煙草のあかりで、奴等の顔が見える。どうもヨーロッパ人くさくない面つきの奴が多い。あるいはアフリカあたりの植民地の蛮民か、それとも植民地の兵隊との相の子か、と思われるような奴等だ。奴等はみな今どこかで喧嘩でもして来たような、ひどく昂奮した勢いでいた。そして何だか訳の分らない言葉でキャッキャッと怒鳴っていた。

やがて、僕の一方の肩をつかまえていた奴が、熊のような唸り声を出して、僕の肩をこづき始めた。僕は形勢不穏と見てとって眼鏡をはずしてポケットに入れた。すると、僕のすぐ前にいた奴が、狐のような声を出しながら、僕の顔をげんこで突っつき始めた。そして、

「この野郎、殺しちゃうぞ」とか、

「支那人のくせにしやがって」とか、

「ドイツ人に買われやがったな」とか言う。

多少はっきりしたフランス語のほかに、何のこととも分らないあるいは熊のような、あるいは猿のような、あるいは狐のような、いろんな唸り声や鳴き声が、僕の上に浴せかけられた。

中には、サックの中からピストルを出して、それで僕の額を突くやら、剣を抜いて頭をなぐる奴まで出て来た。