Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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にっき

日記

宮本 百合子

Lesen Sie 日記 (にっき) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.692 Zeichen · 10 Bildschirme

Aozora Bunko

この頃は野原も躍進都市になったからバスは昔のように、どこででも手をあげたところで停ったりして呉れない。三年前に来たとき、大きいシャボテンの紅い花が咲いていた雑貨店の前でなければ止らない。傘さして歩いて行きかけたら、うしろでもうバスの音がする。駈け出す。大いにかけて、やっと間に合って乗る。私が駈けたと云って○子大笑いしてよろこんでいる。

室積というところは昔船着場で、北米廻送店の娘だった宮本のおばあさんは、ここで生れ、近年までその家との往復があった。どんなところだろうと思いながら、今年になって、机を買いがてらやっと行く。

バスは、新しく出来た病院、瓦斯会社、人夫の合宿所、もとは避病院だったのを直して今は特殊な女たちが特殊な需要をみたすために置かれているところだのを通って、やがて松林に沿うて走る。松の古い林の間を郵便屋が赤い自転車にのって行ったり、子供を抱いた女が歩いたりしているのを見ながら、すぐ松林の外の往来に砂塵をまきあげてバスは走る。

僅か十五分で終点。そこから半町ほどで小型デパート。そこから又半町ほどで町で一番の薬屋。そこから三角になった古風な町筋をぬけてお宮の前を右へゆくと、すぐ波止場があって、室積の内湾が夏日に海面を燦めかせている。