Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
この呼声が通じなくなった頃、お菊はサッサと家の方へ戻って来た。翌日も復たお菊が同じように後を追って行くので、家内も可愛そうに思って、その日は一緒に連れて行った。種夫の為に新宿の通りで吸入器を買って、それを家内が提げて帰ったが、丁度菓物(くだもの)の変りめに成る頃で、医者の細君のところからは夏蜜柑(みかん)を二つばかりお菊にくれてよこした。
私の家では、飯を出す客などがあって、混雑した日のことであった。夕方に、お菊は悪い顔をして、遊び友達の方から帰って来た。そして、乳呑児の襁褓(むつき)を温める為に置いてあった行火(あんか)に凭(もた)れて、窓の下のところで横に成った。
「菊ちゃんはどこか悪いんじゃないか」
こう私は客を前に置いて、家のものに尋ねて見た。お菊はお腹が痛い痛いと言いつつ遊びに紛れていたとのことで、家のものもそれほどには思わなかったのである。姪は熊(くま)の胆(い)を盃に溶かしてお菊に飲ませたりなぞした。
急に熱が出て来た。子供の持薬だの、近所の医者に診(み)せた位では、覚束(おぼつか)ないということを私達が思う時分は、最早(もう)隣近所では寝沈まっていた。