Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
お菊は吐いたり下したりした。それが沈着(おちつ)いて、すこしウトウトしたかと思うと、今度はまた激しい渇(かわき)の為に、枕元にある金盥(かなだらい)の水までも飲もうとした。私は空の白むのを待兼ねて、病児を家内に託して置いて、車で皆川医学士を迎えに行った。まだ夜は明けなかった。町々の疲れた燈火(ともしび)は暗く赤く私の眼に映った。
「菊ちゃん、御医者様が入来(いら)ッしゃるよ」と私が子供の枕元へ帰って来て呼んだ時は、お菊もまだ気がタシカだった。お繁の時のことも有るから、医学士も気の毒がって早速来てくれた。
家内は蔭の方で、
「貴方がたが入来(いら)ッしゃるちょっと前に、房ちゃんが肩掛を冠(かぶ)って踊って見せたんですよ。その時菊ちゃんも可笑(おか)しがって笑って――『可笑しな房ちゃん!』なんて。まだそんなに正気だったんですよ……。『お水! お水!』ッて困りました……。『御医者様が入来(いら)ッしゃるとお水を下さる』そんなこと言って欺(だま)しましたら、漸(ようや)くそれで温順(おとな)しく成ったところなんですよ……」
お菊は大きな眼を開いて医学士の方を見たが、やがて泣出しそうに成った。