Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
山で生れて、根が弱い体質の子供で無いから、病に抵抗するだけの力はある筈(はず)だ、とそれを私達は頼みにした。どうかしてこの娘ばかりは助けたく思ったのである。入院して丁度一週間目に成る頃は、私も家のものも子供の傍に附いていた。大久保の方は人に頼んだり、親戚のものに来て泊って貰ったりした。幾晩かの睡眠不足で、皆な疲れた。
附添の女と私達とは、三人かわるがわる起きて、夜の廊下を通って、看護婦室の先の方まで氷塊(こおり)を砕(か)きに行っては帰って来て、お房の頭を冷した。そして、交代に眠った。疲労(つかれ)と心配とで、私も寝台の後の方に倒れたかと思うと、直(すぐ)に復た眼が覚めた。一晩中、お房は「母さん、母さん」と呼びつづけた。
まだ夜は明けなかった。私は手拭(てぬぐい)を探して、廊下へ顔を洗いに出た。いくらか清々した気分に成って、引返そうとすると、お房の声は室を泄(も)れて廊下の外まで響き渡っていた。
「母さん――母さん――母さん」
烈(はげ)しい叫声は私の頭脳(あたま)へ響けた。その焦々(いらいら)した声を聞くと、私は自分まで一緒にどうか成って了うような気がした。