Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
底から転倒されたような心地に成った。「シッカリものだが何だ」こう以前の自分とは反対なことを言って、家へ戻って来た。彼は自分の家の内に、居ないおせんを捜した。幾つかある部屋部屋へ行って見た。
内の庭に向いた廊下のところで、白い毛の長いマルが主人を見つけて馳けて来た。おせんのいる頃から飼われた狆だ。体躯は小さいが、性質の賢いもので、よく人に慣れていた。二人で屋外からでも帰って来ると、一番先におせんの足音を聞付けるのはこのマルだった。そして、彼女の裾に纏い着いたものだ。大塚さんは、この小さい犬を抱いて可愛がったおせんが、まだその廊下のところに立っているようにも思った。
食堂へ行って見た。そこにはおせんが居た時と同じように、大きな欅づくりの食卓が置いてある。黒い六角形の柱時計も同じように掛っている。大塚さんはその食卓の側に坐って、珈琲でも持って来るように、と田舎々々した小娘に吩咐けた。廊下を隔てて勝手の方が見える。働好きな婆さんが上草履の音をさせている。小娘は婆さんの孫にあたるが、おせんの行った後で、田舎から呼び迎えたのだ。家には書生も二人ほど置いてある。