Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
て立とうとする。源は前後(あとさき)の考があるじゃなし、不平と怨恨(うらみ)とですこし目も眩(くら)んで、有合う天秤棒(てんびんぼう)を振上げたから堪(たま)りません――お隅はそこへ什(たお)れました。垣根の傍に花を啄(つ)んでいた鶏は、この物音に驚いて舞起つもあれば、鳴いて垣根の下を潜(もぐ)るもあり、手桶の水は葱畠(ねぎばたけ)の方へ流れて行きました。
「ちょッ、勿体(もったい)をつけやがって」
と叱るように言って、ややしばらく源は、お隅の悶え苦しむ様を見ておりました。やがて、愚しい目付をしながら、
「どこがそんなに痛いよ。どれ……見せろ」
源の手がお隅の右の足に触るか触らないに、女は悲鳴を揚げて顔色を変えました。
「大袈裟(おおげさ)な真似(まね)をするない――狸(たぬき)め」
父親(おやじ)の影が見えたので、源は窃(そっ)と表の方へ抜出しました。何処へ行くという目的(めあて)もなく、ぶらりと出掛けて、やがて二三町も歩いてまいりますと、さ、足は不思議に前へ進まなくなりました。源は恐怖(おそれ)を抱くようになったのです。
弐
「源さ、お入りや。