Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
なんだって障子の外からなんぞ覗(のぞ)くんだえ」
と声を掛けましたのは、鹿の湯の女亭主(かみさん)です。源は煤(すす)けた障子を開けて、ぬっと蒼(あお)ざめた顔だけ顕(あらわ)しながら、
「私は女衆ばかりかと思って」
「女衆ばかりかと思ったら――御生憎(おあいにく)さま」
と、炉辺で男の笑声が起る。源も苦笑(にがわらい)しながら入りました。
「かみさん、酒を一杯おくれや」
鹿の湯というのは海の口村の出はずれにある一軒家、樵夫(きこり)の為に村醪(じざけ)も暖めれば、百姓の為に干魚(ひうお)も炙(あぶ)るという、山間(やまあい)の温泉宿です。女亭主(かみさん)は蓬(ほう)けた髪を櫛巻(くしまき)で、明窓(あかりまど)から夕日を受けた流許(ながしもと)に、かちゃかちゃと皿を鳴して立働く。炉辺には、源より先に御輿(みこし)を据えて、ちびりちびり飲んでいる客がある。二階には兵士の客もある様子。炉に懸けた泥鰌汁(どじょうじる)の大鍋(おおなべ)からは盛に湯気が起(た)ちまして、そこに胡座(あぐら)をかいた源の顔へ香(にお)いかかるのでした。筒袖(つつそで)の半天を着た赤ら顔の娘は、梯子段(はしごだん)を上ったり下りたりして、酒を運んでおりましたが、やがて炉辺へやってきて、塗箸(ぬりばし)を添えた胡栗脚(くるみあし)の膳