Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうぶんにほんばし
旧聞日本橋
長谷川 時雨
Lesen Sie 旧聞日本橋 (きゅうぶんにほんばし) von 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 158.045 Zeichen · 322 Bildschirme
娘のおあさは色の黒いところと、人のよい正直者の表標のような光りをもつくせに、ちょいと見は鋭く見える眼つきを父親からもらって、母親からは祖父ゆずりのお出額を与えられた。髪の毛の濃い小ぢんまりした小さな娘だった。
ある日、藤木夫妻と娘とが、私の祖母と母の前に並んで座っていた。あたしもそばへ行って座った。丁度父が外から帰って来て客のまたせてある室へゆきがけに通ると、母が縋るように言った。
「おあさが小蒔屋へ行くことにきまりまして――」
「そうか、金助の家か?」
「さようでございます、清元が大層気に入りまして――踊りも質がいいと仰しゃってくださいますので――」
藤木の細君がいった。
小蒔屋――柳橋の芸妓屋の名だった。家へも来るが、両国広小路――電車道路となったが――の、両国橋にむかって右側に、「芭蕉」という大きな薬種屋があって、芭蕉の葉が一葉大きく青く彫刻した看板が棟にあげてある店だった。その薬種屋は「正久の一」という名人の鍼灸医の家で広い店二階に一ぱい患者が詰めかけていた。正久さんは盲目だが上品な老人で、供がついて祖母のために療治に来てくれたが、なにしろ患者が多いので祖母の方から通う日も多かった。