Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうぶんにほんばし
旧聞日本橋
長谷川 時雨
Lesen Sie 旧聞日本橋 (きゅうぶんにほんばし) von 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 158.045 Zeichen · 322 Bildschirme
邸町の昼は静かで、座敷を大きな揚羽蝶が舞いぬけてゆく。お砂糖水をこしらえようと砂糖壺をあけたら、ここにも大きな蝶がじっとして卵をしている――私たちはウワッと叫んだ、なにもかもが珍しいのだった。
だが、ふと、自分の家の午後も思出さないではない。みんなして板塀がドッと音のするほど水を撒いて、樹木から金の雫がこぼれ、青苔が生々した庭石の上に、細かく土のはねた、健康そうな素足を揃えて、手拭で胸の汗を拭きながら冷たいお茶受けを待っている。女中さんは堀井戸から冷っこいのを、これも素足で、天びん棒をギチギチならして両桶に酌んでくる。大きな桶に入れた麩麺が持ちだされる時もあるし、寒天やトコロテンのこともあるし、白玉をすくって白砂糖をかけることもある。
――そのころの人は水の味をよく知っていた。どこの井戸はくせがある。この水は甘い、あそこのは質が細かい――女中さんは自慢で手桶のふたをとる。今日のは何処のですかおあてになってごらんなさいと――
金魚も水をとりかえてもらって跳上っているのであろう。私の鉢のまるっこの子は、大きくなったかしら、背中がはげてきたかしら、目高がつッつきゃしないかしら――