Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうぶんにほんばし
旧聞日本橋
長谷川 時雨
Lesen Sie 旧聞日本橋 (きゅうぶんにほんばし) von 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 158.045 Zeichen · 322 Bildschirme
と火をぱたぱた煽ぐ音をさせたり、
「いなりさん――」
と、十軒店の治郎さんの、稲荷鮨が流してくるようにならなければ、おでんやや、蠑螺の壺焼やも出なかった。夜になると、人力車さえ通らない、この大店ばかりの町は、田舎のように静かで、夜が更け冴えて、足袋やさんが打つ砧が――股引や、腹掛けや、足袋地の木綿を打つ音が、タン、タン、タン、タン、カッツン、カッツンと遠くまで響き、鼈甲屋さんも祝月が近づくので、職人を増し、灯を明るくして、カラン、カン、カン、カランカンカンと、鼈甲を合せる焼ゴテの鐶を、特長のある叩きかたで、鋭く金属の音を打ち響かせている。そんな晩、らんぷや行燈の下で、てんでの夜業をしていた家々の奥のものが、夜のお茶受けに、近所にはばかりながら買いにやるのだが――
立食旦那の家内では、総出で、夜更けの屋台店に立並んでいる。暖かげな、ねんねこばんてんへくるまって、襟巻きをして、お嬢っちゃんも坊さんも――お内儀さんが、懐から大きな、ちりめんの、巾着を出して、ぐるぐると、巻いた紐を解いてお鳥目をつかみ出して払うのを、家の者に気がつかれないように、そっと女中にくっ附いていって、女中の袖の下から、小さな梟のように覗いていたあんぽんたんは、吃驚して眼を丸めた。