Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(二)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(二) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 215.865 Zeichen · 432 Bildschirme
勿論、今までに幾人も通ったが、北の方からきこえて来るその足音がどうも待っているものであるらしく直覚されたので、半七は咳きの合図をすると、塀の横手からもその返事があった。
北から来る足音はだんたん近づいて、それは素足で土を踏んでいるようで、極めて低い潜めいた響きであったが、耳のさとい半七にはよく聴き取れた。注意して耳をすますと、それは人の足音ばかりでなく、四つ這いに歩く獣の足音もまじっているらしかった。何分にも暗いので、半七は星あかりに透かしながら声をかけた。
「もし、姐さん」
人はなんにも答えなかったが、暗い底で俄かに獣の唸るような声が低くきこえた。半七は再び咳払いをすると、塀の横手から彼の男が跳り出た。かれは太い棒を持っているのであった。暗いなかで獣の唸える声がけたたましく聞えた。同時にここへ駈けてくる草履の音が聞えた。
逃げようとする女は、半七に曳き戻されて、寺の門前に捻じ伏せられた。人と獣との闘いもやがて終ったらしく、寺町の闇は元の静けさにかえった。
「どうした」と、半七は声をかけた。「石橋山の組討ちで、ちっとも判らねえ」
「大丈夫です」
それは庄太の声であった。