Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(二)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(二) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 215.865 Zeichen · 432 Bildschirme
文字春は自分の大切な弟子の身の上がなんとなく危ぶまれるので、根掘り葉ほりに詮索をはじめた。
「そのお雪さんを前から識っているの」
「いいえ」と、娘は微かに答えた。
「一度も逢ったことはないの」
「逢ったことはありません。姉さんには逢いましたけれど……」
文字春はなんだか忌な心持になった。お雪の姉のお清は、今から十年前に急病で死んだのである。それにしても此の娘がどうしてそのお清を識っているのかを、彼女は更に詮議しなければならなかった。
「死んだお清さんはお前さんのお友達なの」
娘は黙っていた。
「おまえさんの名は」
娘はやはり俯向いてなんにも云わなかった。こんなことを云っているうちに、あたりはもう夜の景色になって、そこらの店先の涼み台では賑やかな笑い声もきこえた。それでも文字春はなんだかうしろが見られて、どうしてもこの怪しい娘に対する疑いが解けなかった。彼女は黙ってあるきながら横眼に覗くと、娘の島田はむごたらしいように崩れかかって、その後れ毛が蒼白い頬の上にふるえていた。文字春は絵にかいた幽霊を思い出して、いよいよ薄気味悪くなって来た。いくら賑やかな町なかでも、こんな女と連れ立ってあるくのは、どう考えてもいい心持ではなかった。